自分が希望する職業が見えてきたら、次のステップは「どこで働くか」を決めることです。もちろん、自分で会社を起こしたり、フリーランスとして働くことも可能ですが、現実には、企業に就職する人がほとんどです。
仕事はどうやって探すの?
同じ業界の同じ職種でも、就職先によって仕事内容は大きく異なる場合があり、職場の環境や労働条件もそれぞれなので、よく調べることが肝心です。仕事や職、つまり就職先を探すには、大きく分けて①職業紹介所を通して探す、②企業に直接アプローチする、2つの方法があります。どちらがよいということではなく、目的に合わせて2つの方法を上手に使いこなすことが大切です。
どうやって企業を選んだらいいの?
就職活動とは、「企業に採用されること」であると同時に、みなさんが「企業を選ぶ」活動でもあります。みなさんは仕事に何を求めるでしょうか?それによって、どうやって企業を選んだらいいかは、大きく変わってきます。
やりたいことができるかどうかで選ぶ
どうしてもやりたい仕事があるならば、その仕事ができる企業を選ぶことになります。ただし、給料や労働時間、職場環境などを調べずに就職して、すぐに離職してしまうことがないように、いろいろな条件をよく検討することが大切です。
力を身に付けられるかどうかで選ぶ
就きたい職業があっても、まだその力がないという場合もあると思います。例えば、商品を仕入れる「バイヤー」になりたくても、商品の知識も仕入れる方法もわからなくては採用されません。このような時は、まずは「販売員」になって、力を付けてからバイヤーをめざすという方法があります。その場合は就職したあと経験を積めば他部署に異動できるチャンスがあるかどうか確認しておくことも大切です。
給料で選ぶ
給料がよい仕事やさまざまな手当が出るなど金銭的な条件が充実している職場はとても魅力的です。しかし、給料がよいというのは、それだけ求められるレベルも高いということ。もしかしたら残業や休日出勤が多いのかもしれません。給料の額で職場を決めると、やりたい仕事ができずに、仕事の“やりがい”や自分の“将来性”を失うことにもなりかねないので注意が必要です。
企業名で選ぶ
有名企業や大企業に憧れている人もいるでしょう。どうしてもその企業で働きたいなら別ですが、イメージだけで選ぶと、やりたい仕事のある部署に行けず離職につながるケースも考えられます。また、安易に契約社員・派遣社員などの条件で就職すると、「給料が安い」「仕事を任せてもらえない」などの問題が起こることもあります。
就職活動で悩んだときはキャリア・コンサルタントに相談しよう
キャリア・コンサルタントとは、就職を希望する人に対してさまざまな相談支援を行う専門家。学校の就職部やハローワークのジョブカフェなどにいて、相談に来た人に「どんな仕事が向いているか」「どんなスキルを身に付けたらよいのか」といったアドバイスをしています。そのアドバイスはとても有効。就職活動には不安や悩みがつきものです。そんなときはひとりで悩まずにキャリア・コンサルタントに相談してみましょう。
学習歴や取得した資格は「ジョブ・カード (キャリアシート)」にまとめてみよう
就職活動においては将来の目標や自分のアピールポイントを明確にしておくことが大切です。自身の能力や将来の希望を整理し「ジョブ・カード( キャリアシート)」にまとめておくのもひとつの方法です。
「ジョブ・カード(キャリアシート)」とは、それまでの学習や仕事(アルバイト)、取得した資格や免許、自己アピールポイントなどを整理して記入できるシートのこと。自分の能力や職業意識を整理することができたり、自分のアピールポイントを明確にすることができます。これを持ってハローワークやジョブカフェに行くと、登録キャリア・コンサルタント*がチェックし、的確なアドバイスをしてくれます。
また、その人の能力がわかりやすくまとめられているので、就職活動にも活用できます。学生版ジョブ・カードも開発されており、用紙は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
*登録キャリア・コンサルタントとは
キャリア・コンサルタントの資格を持っている人が、定められた講習を受けることにより、登録キャリア・コンサルタントになることができます。ただし、学校の就職部、企業の採用担当者の中で、定められた講習を受けることで、暫定的に登録キャリア・コンサルタントになることも可能。この資格を持っている人のみが「ジョブ・カード」に所見を記載できます。
主な仕事の探し方
職業紹介所を通して探す
学校の就職部(無料職業紹介所)を利用する
専門学校・大学・短期大学には「就職部(労働局に届け出た無料職業紹介所)」など、就職先を斡旋したり、就職活動を支援する部署が必ずあります。もちろん就職についての相談にも乗ってくれます。また、学びに結びついた職業を多く紹介しているのも特徴。学校の先輩が就職しているなど、実績ある企業を勧めてくれるので、安心です。新卒者の多くは学校の就職部を利用した就職活動を行っています。
ハローワークを利用する
「ハローワーク」は公共の職業紹介所です。転職者や再就職者が利用する施設と思っている人がいるかもしれませんが、新卒者を含めてすべての人を対象としています。就職についての相談も受け付け、適性や希望にあった職業を紹介してくれます。また、専門学校などで行う職業訓練も紹介してもらえます。ハローワークは地域に密着した企業の求人が多く、扱う求人の数が圧倒的に多いのが特徴。インターネット上でも求人の検索が可能です。
ジョブカフェを利用する
都道府県が運営する、若者向けの職業紹介施設が「ジョブカフェ」です。職業の紹介はもちろん、就職活動についての相談の受け付けや、若者向けの職場体験などの紹介もしています。15歳から34歳までを若者として対象にしていることが多いですが、施設によって対象年齢は違います。ハローワークのすぐ近くに設置されていることが多くあります。
民間の職業紹介を利用する
インターネット上で氏名や学歴・職歴を入力し、その後、職業紹介業者の担当者と話し合って職業を紹介してもらうケースが一般的です。業者にもよりますがエンジニアなどの求人が多く、また、タレントやモデルなど芸能関係も扱っているのが特徴。ひとつの分野に特化した求人だけを扱う業者もあります。
安心できる職業紹介所を利用しよう
職業紹介所とは、国から認可を受けて企業と求職者の仲介を行う施設で、無料職業紹介所と有料職業紹介所があります。
無料職業紹介所にはハローワークや専門学校・大学・短期大学の就職部、NPO法人などが行う職業紹介所などがあります。一方、有料職業紹介所は民間の企業が、求人したい企業からお金をもらって紹介するもの。
無料職業紹介所で紹介する仕事は、その企業の実情をよく調べてある場合がほとんどですが、有料職業紹介所の仕事の中には、「掲載内容が事実と違った」「個人情報が流失した」などの問題があるものもあり、注意が必要です。
なお、職業紹介所の開設には国(労働局)に届け出る必要があります。無届けの施設や業者に出会ったときは十分気をつけましょう。なお、学校は無料職業紹介所では対象者に制限があるため、卒業生などを対象とした有料職業紹介所(有料とはあっても無料で紹介)を開設するところが増えています。
企業に直接アプローチする
企業のホームページにアクセスしてエントリーする
希望する企業が明確であれば、その企業のホームページにアクセスして求人情報を確認し、指定された方法でエントリーします。求人があってもホームページに掲載しない企業もあるため、直接電話などで確認した方がよい場合もあります。
就職フェアに参加して企業の担当者と話をする
いろいろな会社が集まって会社説明をしたり、質問を受け付けたりするのが就職フェア。関係ある業界の企業が合同で行うことが多いので、ひとつの業界のいろいろな企業の話を聞いてみたいという場合には、とても有効な手段です。相談することで、すでに就職試験を受けているといった心構えが必要です。
新聞の求人広告に応募する
新聞に掲載される求人広告は事務の仕事が多い傾向があります。直接応募資料を送るように指示がある場合もありますが、求人情報誌や自社のホームページを参照するよう指示してある場合もあります。
折り込みチラシ、求人情報誌、フリーペーパーを利用する
新聞の折り込みチラシ、書店で売っている求人情報誌、駅などに置いてあるフリーペーパーを見て、企業に応募する方法もあります。正社員の求人もありますが、パート・アルバイトも混ざっていることがほとんどです。
学校の就職部を利用して就職先を探そう
学校では一般に無料職業紹介事業を労働局に届け出ており、在校生を中心に職業を斡旋しています。最近では、有料職業紹介事業の届け出も行い、卒業生に対しても職業を斡旋できるようにしている学校もあります。企業に直接アプローチする場合は、その企業に関する詳しい情報を個人で入手することが難しい場合もあります。その点、学校の就職部には、今までの卒業生の就職データなどが揃っているので、これらの情報を十分に利用することが可能。学校の就職部は就職先を探すうえでいちばん信頼できる機関といえます。
就職活動に必須!求人情報の見方
どんな方法にしろ、仕事を探すときは求人情報をもとに応募する企業を探します。ここではその項目を紹介。
企業概要
所在地や従業員数などが書かれています。企業の基本的な理念などもわかるので、自分にあうかどうかホームページなども見てよく確認しましょう。
募集職種
募集している職種です。ただし、名称だけで判断せずに、仕事内容を細部まで確認することが大切です。
仕事内容
採用後に任される仕事の内容です。大まかにしか書いていないので、面接の際などに、細かい内容は確認するようにしましょう。
応募資格
応募するのに必要な資格やスキルです。ただ、条件を満たしていなくても応募できるケースもあるので、直接確認してみるとよいでしょう。
職場
採用後に働く場所です。本社とは別の場所で働くこともあるので、通勤可能か確認が必要です。
勤務時間
おおよその勤務時間です。平均的な時間なので、残業がどれくらいあるかもきちんと確認しましょう。
給与
基本給です。そのほかに、残業手当・住宅手当・休日出勤手当・交通費などがあるかも確認が必要です。
こんな企業には気をつけよう!
世の中には、就職しても人が次々と辞めていってしまったり、将来的に長く勤めるのが難しい職場、一般に「ブラック企業」と呼ばれる職場があります。このような企業に就職すると、スキルアップにつながらないだけでなく、心身の健康を害することにもなりかねません。働きがいがない、報われない、先が見えない、雇用が安定していないといった企業に就職しないためにも、内情は事前にきちんと調べておくことが大切です。なお、学校の就職部は実績をもとにこういった企業の情報を把握している場合も多いため、安心して利用することができます。
①長時間残業を給与体系に組み込んでいる企業
給与というと「月20万円」など、支給総額を意識しますが、その内訳も調べておきましょう。企業によっては、基本給+残業代を給与とし、長時間の残業代を給与体系に組み込んでいるところもあるので注意が必要です。
②社員規模に比べて採用人数が非常に多い企業
業務拡大の予定もないのに、全従業員数に比べて採用人数の割合が高い企業があります。これは採用しても人が次々に辞めていってしまう、つまり離職率の高い企業かもしれません。
③労働時間が長く、有給もとれない企業
月間の時間外労働が80時間を超える、休日出勤が恒常化している、入社3年目までの社員は誰も有給をとっていない、といった企業もあります。このような職場はサービス残業、過労が問題になっていることもありますので、注意しましょう。
④その他
このほかにも、セクハラ、パワハラ、過労死などで問題になった企業、求人情報と採用後の労働条件が大きく異なる企業なども気をつけるようにしましょう。
出典:当振興会発行「業界&就職ガイド2022~2023年度静岡県版」より